ステンレスの桶で仕込む訳
2022年10月06日
昔ながらの味噌造りと言えば木の大桶を連想しますね。
弊社にも、もちろん古い木桶があります。
でも醤油と一部の少量の味噌を除いて殆どの味噌は深さ1m位のステンレスの桶で仕込みます。
それには理由があります。
弊社では、どんな容器で味噌を仕込んだら美味しいか、香りが良いか検討しました。木桶、陶器、ステンレス、ホーロー、樹脂などです。
結果 樹脂製を除いて殆ど差が出ませんでした。容器の素材より、桶の大きさや仕込みの期間の気候の差の方が遥かに味、色、香りに影響しました。
酸素を透過しやすい樹脂は着色が進みやすく、いまいちの結果でした。
見た目一番人気の木桶は木材を組んで作ります。この僅かな隙間や木の凹凸などに有用菌が住みついて独特の風味を生み出すとも言われます。
しかし蔵に住む特徴ある菌は実は糀造りの時に多く取り込まれるのです。
味噌は半固体なので木桶に接する面だけに影響します。実際木桶で仕込んだ味噌と他の味噌とを優位に判別できませんでした。
それより木桶の欠点は、この木の目地に洗いきれない雑菌やダニも生息しやすい環境だという事です。
そして味噌を熟成させるとチロシンという成分が桶の表面に硬い結晶を作り、いつしか堆積して異物と認識されやすいのです。
また桶が古くなると木くずが混入する可能性もあります。
洗ったステンレス桶の内部
まだチロシンの白い結晶膜が見えます
喜多屋ではより衛生的な製品造りの為にステンレス桶を選びました。
仕込み前には長時間 ピカピカつるつるになるまで磨きあげるのが一仕事です。
手作業で地道にゴシゴシと磨きます。
でもより安心な味噌造りには欠かせない仕事なのです。
綺麗に磨かれた仕込み桶の内部
だれしも汚れた食器よりピカピカの食器で食べたいですからね。